細いその指を
赤が滴る
目覚めた彼女は最後に自分を
殺した
自分を貫く一瞬の
銀の
苦痛に
赤が飛び散って
しまった白い美しい羽は強く一度羽ばたく
それでも彼女は飛ぶことも落ちることもない
あるのは終焉でも救いでもなく痛みだけ
傷口に触れるとそこは何事もなかったかのようで
彼女は何度も何度もその体に
銀を
突き立てた
その意識が痛みでなくなるまで何度も何度も
ほんの数秒間だけ流れ出すわずかな
赤で
海ができた
しばらく続いた鈍い音はやみ、彼女は
赤の海に崩れ落ち
その純白で美しかったすべてを
赤に
沈めた
その身を
赤く染めた
ことではなく
身に纏う白い羽を
闇へと堕としたことでもなく
自分を殺したことが彼女の
罪だった
落ちていく羽から目をそらしたことが
罪だっ
た
赤の飛び散る自分か
ら逃げた
ことが
罪だった
すべてから逃げようとしたことが
罪だっ
た
死というものには
価値も意味も恐れも救いもない
人々が死にそれらを与えているだけ
ただそこにある死は
最大の恐怖とも最高の救いともなりうるもの
それは生も同じこと
そのときの彼女にとって
生は
恐れで
痛みで
苦しみで
死は
救いで
逃げ場所で
安らぎで
罪だった
罰は罰でしかなく
それに浄罪としての価値を与えなければ
それはただただ苦しめる棘の鎖でしかない
彼女の生という
罰にはその価値など一切与えられなかった
逃避は
殺戮を
罪にし、
生を
罰に
した
彼女の
黒
それはあまりに重すぎる
黒
The
deity
was
inhuman.