四日目 アルバム




翌日。
昨日までより目覚めは何倍もよかった。
あまりあのことを深く考えずにぐっすりと眠ることができた。
それはサトミのおかげかもしれない。

「お、やっといつもどおりに戻ったか」

「まあな。」

「ほんとに心配したんだぜ?今にも死にそうな顔してたからな。」

そういってヒロキが本当に安心したように言ってくれた。

「お、やっと復活したねえ」

アイもそういいながらこちらにやってきた。
後ろにはいつものごとくサトミがついている。

「お、おはよう」

「おう。どうしたんだ?」

挨拶をしてきたサトミはどこかようすがへんだ。
俺と目が合った瞬間に顔を赤らめふっと目をそらしてしまった。

「な、なんでもないから」

そういってアイの後ろに隠れてしまう。
サトミは小柄で、それに対してアイは身長が高いのですっぽり影に入ってしまいこちらからはまったく見えなくなってしまう。

「どうしたの?・・・あぁ。後で話してちょうだいね。」

アイは不思議そうな顔で後ろに隠れるサトミを見ていたが、おれとサトミを見比べてすぐになにか合点が言ったような顔をしてそういった。

「ところで、今日の放課後はみんな暇?昨日はいろいろあっていけなかったから今日こそは行こうと思って、買い物。」

「おれはいいぜ」

「わ、わたしも」

「俺も問題ない。ところでサトミはどうしたんだ?」

さっきから気になっていたことをアイに聞く。
どう考えても様子がおかしい。
風邪でもひいたのだろうか?

「はぁ・・・・ばかっ」

アイは深くため息をついた後、その二文字を俺に返してきた。
俺はその理由を一生懸命考える。
その様子をみて、アイはさらに深くあきれたようにため息をつき、ヒロキはニヤニヤわらっている。
なんだ?
ヒロキもわかるのか?
ということはわからないのは俺だけか。
ヒロキやアイよりは勉強ができるつもりでいたんだが。
ヒロキにもわかるのに俺にわからないというのはなんか悔しい。
結局俺はその日の授業の間ずっとその理由を考え続けた。



そしてその日の学校を終え、買い物に向かうため帰り支度をしているときだった。

俺は自転車をこいでいる。
あたりは灰色でどしゃ降りだ。
傘も差していないしジャンパーも着ていない。
かなり急いでいるようだ。
おれが走っているのは登下校に使う道。
学校へと向かう方向。

今のはいったいどういうことなんだ?
頭をフルに使って考える。

「どうしたんだ?まださっきのこと考えてたのか?それなら・・・」

「コラ!それはサトミが自分で言うことなんだから。あんたは口出ししない!」

ヒロキが言いかけたところにアイが割り込んで叱る。
アイはかなり真剣だ。
いったいなんなんだろう・・・
さっきので疑問が二つに増えてしまった。
ただ、今見た未来は今までのより遠いような気がする。
なんとなくの感覚だが。
そういえばと思いケータイで天気予報を見る。

な!?

週間の天気予報の降水確率は今日からずっと0%が続いているが日曜日から急に90%になっている。

 一週間後、午後8時です。

あの瞬間のその後、何かが起こる?

 あなたはその目的地とこれから見ていく道しるべとをみてこの先の歩みを進め、漆黒の結末から逃れてみてください。

 良くないことが起きるって決まったわけじゃないんでしょ?かもしれない、でつまらない日々を送るってなんかすんごく損じゃないかな?

そうだ。
落ち着いて考えろ。
受け入れるんだ。
あの漆黒の結末は事実だ。
しかし、それは事実といっても可能性に過ぎない。
ほかの可能性もきっといくらでもある。
こんなことで取り乱してもだめだ。
冷静になれ。
あの未来は100%ではない。
あれから逃れるんだ。
今見たのはそのための道しるべ。
あの結末も可能性の一つであると受け入れ、俺次第ではそれから逃れることができることを頭に留め、その上でこれからどうやっていくか考えるんだ。

「おまえまだ悩んでるのか?本当に馬鹿だな・・・そんな睨むなよ二人とも。大丈夫言わないって。」

ヒロキが睨んできたアイとサトミに弁解するように言った。



「さて。まずはそこの雑貨屋ね。」

そういってアイが小さいがおしゃれな雑貨屋に入っていった。
俺は店に並ぶ品物を見て回る。
ふと、アイやサトミの方を見ると日記のコーナーにいた。
日記?
そうだ。
日記をつけていこう。
未来の一瞬について。
それ見ながら自分が今どうするのが一番いいかを考えていこう。
そう思い俺も日記のコーナーへと向かった。

「あれ?あんたって日記つけるの?」

「いや、なんとなくはじめようかなって思って」

「ふーん。そんじゃあさ、これにしなよ。」

そういって木の表紙の黒い日記を渡してきた。

「いいけど、どうしてだ?」

「まぁまぁ。」

そういってにやける。
何をたくらんでいるのだろうか?



結局、日記はアイにすすめられたものを買い、その後いくつかの店をまわって解散となった。
家に帰って今日買った日記を取り出す。
そして今日見た一瞬の映像を思い出してかいていく。
その一瞬を書き終わるか終わらないかのところで、また新たな一瞬が見えた。

目の前にサトミが立っている。
学校の帰りだろうか?
場所は近所の公園。
どうしたんだろう?
顔を真っ赤にしてこちらを見ている。

そういえば最近サトミの様子がおかしかったな。
もしかしたら何か関係があるのかも。
そう思ってそのことも日記に記したところで俺の一日は終わったのだった。


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