第二刻 ご近所さんパート1 催眠術と世界の発展の考察
「ここか」
そういって男の人は玄関の闇玉で照らされる中まで手を引いてくれた。
あっ。結構かっこいいかも。
闇に照らされた男の人の顔を見て思った。
年も同じくらいかな。
「うん。ありがと。」
「どういたしまして」
そういって男の人はサッと後ろを向いて帰ろうとした。
「あっ」
せっかく感動的?とは言いがたいがかなり風変わりな出会い方をしたんだから名前ぐらいは聞いておきたい。
「あの、もしよかったら名前聞いておきたいんだけど・・・・また会えたらお礼もしたいし。」
「俺の名前はシト・リチア。」
あれ?
リチア?
どこかで見たことあるような・・・
ん〜
どこだっけ?
「えっと・・・どこだっけな・・・」
頭に手を当てて、いかにもなポーズで考える。
それに気づいたのかシトがあぁと言いながら私の疑問をすっきりさっぱり解決してくれた。
「俺の家そこだから。たぶん表札で見たんだと思う。」
「あぁ・・・えぇ!?」
すぐそこ?ご近所さんですか?
こんなことってあるんだな。
というか毎日見ているはずなのにすぐに気づけなかった自分の脳みそが悲しい。
「私の名前はウルイ・エンレイ。ルイってよんで。私もシトでいい?」
「あぁ」
「それじゃあありがとね。ご近所さんなら今度お礼しにいくよ。」
そっか。シトか。
そういえば光人の割には静かだったな。
まぁそういう人もいるか。
手を振ってシトを見送る。
「ただいまー」
居間に入るなりお母さんが心配そうに声をかけてきた。
「遅かったわね。なにかあったの?」
「ごめん。寄り道したら遅れちゃって。」
「気を付けなさいね。これからはもし遅れるようなら必ず闇球もっていきなさいよ。」
「えぇ〜だって家にあるの大きくてかさばるし。」
とびっきり不満そうな顔を作って何を言いたいか主張する。
お母さんの真っ黒な目を力を込めて見つめた。
小さいの欲しい、小さいの欲しい、小さいの欲しい。
三回唱えた。
これできっと願いはかなう・・・
「自分で買いなさい。」
・・・わけないか。
せめて催眠術とかいうのにでもかかんないかと思ったけど、この人はおっとりしているように見えて結構しっかりしているし。
「う〜お金ちょーだいよー」
「あなたにお金あげてたらキリがないでしょ。あの闇球だってまだ半年でしょ?」
「う〜・・・」
世界はどんどんと発展していくんだ。
半年あればもうひとまわり小さい闇球だってできる!
「さっ。もういい?ご飯できるまで部屋の掃除でもしなさい。いい加減散らかってるでしょ?」
「はぁい」
しぶしぶ二階の自分の部屋へと上がっていく。
「はぁ〜」
どさっと音を立ててベットに倒れこむ。
これでも少しは甘くなった。
前は灰色の時間の30分前には帰ってきなさいといわれた。
さすがにそれはひどすぎる。
30分あればたくさんのことができてしまう。
時は金なり、となんかの本に書いてあった気がする。
本といっても私が読むのは漫画か雑誌か教科書ぐらいだけど。
それに、最近は3つ目もあまり読んだ記憶がない。
本来みんなが教科書を読んでいるときに、私はふわふわ不思議な世界に吹っ飛んでいるからだ。
そういえば最近は恋愛小説も読んでるな。
恋愛小説に時は金なりなんて出てくるだろうか?
相当濃いキャラが出てくる話なんだろう。
あっ
気が付いたら門限の話からキャラの話まで頭の中が流れてしまった。
もとに戻すとしようか。
結局、灰色の時間30分前という門限は私の強い意志によって打ち砕かれ、お母さんも容認している。
しかし条件として遅れそうなときには闇球を持って行きなさいと言ってきた。
きっとこれも私の意思と行動力によって打ち砕かれるはず!
打ち砕いたところで結局闇球を持っていかなければ困るのは私なのだが。
さっきのがいい例だ。
「そういえば・・・」
どうやってまたシトに会おう・・・
「うーん」
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