第十四話 危険な領域




コツッコツッコツッ
「ん〜??」
何かに頭をつつかれて目が覚めた。
目をこすりながら体を起こし枕元を見るとそこには光り輝く鳥がちょこんと座りこちらを見上げている。 
黙ってそのt手のひらサイズの鳥にむかって手を伸ばした。
すると、鳥は俺の指が触れるか触れないかの所でぼんやりとした小さいいくつかの光の玉となって俺の指にまとわりつき消えていった。
それと同時に頭のなかに声が入り込んでくる。
「召集か・・・」        
まだ朝の四時をさしている時計をみてため息を吐きながらベットから起き上がる。
とりあえず伸びをしてから黒いコートを身にまとい仮面を付けて機関の召集へと向けて消える。
ちなみにコートの下は黒のスボンにシャツとなるのでたとえ寝起きの格好からコートの姿になっても問題はない。

まだ少しぼーっとしている頭のまま扉をくぐり階段をのぼり部屋に入る。
「ようりょう、はやいな」
「おまえが遅いんだよ。いったい何分間頭突かれ続けたんだ?」
「結構すぐに起きたつもりだったんだけどな」
辺り見渡すと一つをのぞいてすべての席が黒いコートで埋まっている。
どうやら一番最後ではないらしい。
「よぉ〜」
丁度俺が席に座ったところで後ろから俺よりもさらに寝ぼけた声がかかる。
「ウィスト、あんた遅いわよ」
「うっせーよ。大体こんな朝早くに呼び出すなんて何事だ?」
「昨日言っていた調査の結果についてだ」
ゼロが不機嫌そうに言うウィストに応えるようにしてそう言って説明を始めた。
「昨日二人が影と遭遇した道を調べたところ、わずかに力の痕跡が残っていたのが見つかった。それは、光、闇、無のどれにも分けることができない力。堕ちた る力だった。」
「だから何だよその堕ちた「堕ちたる力とは・・・」」
口を挟もうとしたウィストを遮るようにレコルドが言う。
いつものようなやわらかい口調ではなく、厳しい深刻な口調だった。
何か言おうとしたウィストはその対照的な口調に驚き口をつぐんだ。
「堕ちたる力とは大昔に途絶えたとされる力。憎しみ、怒り、悲しみ、欲望。能力者の中でもこういった類の強い感情によってただひたすら力を望み、結果周り の人間だけでなく自分自身までもを生贄としてささげた者。その力をひたすらもとめた者が最期に辿り着く扉。その先の決して触れてはいけない領域にある強力 でどうすることもできない力だ。その扉にたどりつき開け、堕ちたる力を手に入れた者たちのことを堕ちたる者と言う。」
レコルドの説明をゼロが引き次ぐ。
「今ではその扉に行き着くほどの者がほとんどいなくなり、さらに扉を開くすべも途絶えたため、堕ちたる者は消滅したとされていた。しかし、お前たちと対峙 している裏の機関の者たちは皆、数少ないその扉の前までたどり着いた者たちだった。そして、ついに力を手に入れた。先日ウィストやヴィオが戦ったという影 のような魔物も昨日二人をおそった影もみんな堕ちたる力によるものだろう。」
ゼロは座りなおして軽く息をついてからさらに重い声で言う。
「もともと、裏の機関の目的は扉を開き力を手に入れることだった。この機関はそれを察知した私とフォーレがその行動を監視するために設立した機関だ。完璧 に監視するというのは不可能だがそれでも何か大きな行動を起こしたとき、それに対処するために設立した。堕ちたる力は本当に恐ろしい力だ。たとえ手に入れ てはいないとはいえそれを目前にしたものたちと対立しているということを知れば皆の負担になると思い今まで黙っていた。だが今はもうそんなことをいってい られるような状況ではない。黙っていてすまなかった。これからは危険な領域だ。この場から立ち去ってもかまわない。」
部屋に沈黙が走る。
その沈黙は恐怖と不安。
しかしおそらくここから立ち去ろうとするものはいないだろう。
少なくとも俺は立ち去る気は更々ない。
「何ふざけたこといってんだよ。あんた『はいそうですかじゃ辞めさせてもらいます』なんていうやつがここにいるとでも思ってるのか?」
ウィストが言う。
「そうか。皆、ありがとう、感謝する。いいか、これからは本当に危険だ。堕ちたる者の力ははっきりいって格が違う。破滅のためだけに特化した力だ。 さらに、堕ちたる力によってる創られる魔物は能力者を的確に探し出すことができる。そして、創りだした者の命令を忠実に聞き他の魔物とは違い昼夜関係なく 力を発揮できる。つまり、我々はいつ襲われてもおかしくない状況にあるということだ。皆常時警戒を怠らないように。以上だ。」
部屋から黒いコートが消えていく。
俺もその中家へと帰る。



部屋の時計を見ると4時20分をさしている。
とりあえずまだ余裕があるようなのでもう一度寝ようと思い布団に入った。
しかし、堕ちたる力のことが頭を巡りなかなか寝付けない。

扉、その向こうにある力。

もしゼロがいう扉というのが比喩とかそういったものでなく実際にあるとしたら?

もしそうなら、あの夢の扉は何なんだろう。

あの夢の扉とゼロのいう扉は何か関係があるのだろうか。

それを開けることで目覚めた俺の力はなんなんだろう。

そんな考えが頭を埋め尽くし眠れないでいる。
機関に入ってすぐの頃に訊いたが、力が目覚めるときに扉を開けたりした者は俺以外にいなかった。
普通は気がついたら変な感覚を覚えそして能力が使えるようになっているそうだ。
そんなことをいつまでも考えているうちに6時半になりセットしておいた目覚ましが鳴り響く。

「結局寝れなかった・・・」
とりあえずいつものように顔を洗い朝食をたべる。
キャンプのための道具は昨日のうちに準備してある。
支度を終えいつもより少し重いかばんをもって家をでた。


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