第十六話  トランプ ROUND2〜そしてキャンプ場へ〜




大富豪はなかなか俺もまともに戦えた。
それでもこの二人は強すぎる。
俺は勝率20%ほどだろうか。
りょうは10%ほどで、ハルはもちろん言うまでもなく一回も勝てなかった。

「だぁあああ、勝てねぇ〜 女子はみんなこんなに強いのか!?それなのに俺たち男はこんなんでいいのか!?このままでは第5次世界男女大戦での我が軍の負 けが目に見えているではないか!!!!」
いやいや。
話しでかすぎるだろ。
てか今までそんなのが4回もあったんですか。
「あんたらほんとに弱いわね。」
なるほど、愛夏は放置プレイでいくようだ。
「おまえは強すぎだろ」
りょうもそっちに突っ込むのか。
無駄に大きいリアクションをしてしまったハルが困っている。
「あたしなんてまだまだよ。あやのお母さんはもっととんでもないよ。あたしでも一度も勝ったことないんだから。」
「・・・あやのお母さんってどんな人だっけ?」
「え?ゆうはいつもあってるじゃん」
・・・あのやさしいまさに絵に描いたようなあやのお母さんが愛夏も勝てないほど強いと?
「特にポーカーはマジでやばいよ」
「『本気出してもいい?』って言うとロイヤルフラッシュ連発したりするしね。」
「それって・・・」
イカサマじゃね?
横で愛夏が苦笑いをしてアイコンタクトをしてくる。
やっぱりあやは気づいてないんだ・・・
それにしても、あの優しいあやのお母さんの見方をすこしばかり変えたほうがいいかもしれない。
「それじゃあそのポーカーいってみるか?」
そのあやの母親に鍛えられた二人がどれほどのものか知りたくなり提案する。



「ありえない・・・」
例のごとく男三人はまったく手が出なかった。
「ねぇゆう?」
唖然としているおれにあやが声をかける。
「「本気出していい?」」
あやと愛夏が同時に言った。

「マジ?」
あや・・・ストレートフラッシュ
愛夏・・・フォーカード
「ちぇっ負けちゃったな」
「・・・・・・」
男子三人は悶絶している。
そして最強の女戦士二人はのんきに、あそこでああすればよかった、などと反省会をしている。
「でもやっぱりお母さんみたいにロイヤルフラッシュ連続はムリだよね」
あやは気付いてないんじゃなかったのか?
「さっ気を取り直して。あと二、三十分で到着みたいだな。何する?」
時計としおりを見ながら言った。
「う〜ん。ダウト知ってる?」
「ダウトってあれか?あの順番にカードを出していく」
「うん。ハルとりょうはわかる?」
「あぁ」
「一応わかるけど・・・」
「それじゃーいこーか。あれは最後の方になるとなかなか終わらないから上位2、3名が決まったらそこでゲーム終了ってことでいいね。」
「オッケー。」
そういいながらあやがカードを配っていく。
「それじゃあ、ジャンケンポン」
「俺からか。時計回りで、1」
「2」
「さぁん」
「よーん」
「ご「ダウト!!」」
愛夏がハルが言い終わる前に叫ぶ。
「何でだよ」
そういいながらしぶしぶ捨てられたカードを手札にくわえる。

そして順番はめぐる。
なかなか誰もダウトをかけず緊迫した状況が続く。
そしてまわりにまわり・・・
「1」
「2」
「さぁん」
「ダウト」
りょうがあやがカードを捨てようとした瞬間に言う。
「ちぇっ。ばれちゃったか。」
そういってあやが手に持ったカードをずらすと1枚に見えたカードが3枚になる。
三枚同時だしなんて・・・

そしてまた、ダウトは続く。
まただ
なぜ誰もあまりダウトをかけないんだ?
「1」
「2」
「さぁん」
「よん」
「ご「ダウト!!」」
「何だよ・・・」
ハルがそういって愛夏を恨めしそうな目でみながらカードを再び手札にくわえる。

原因はわかってる。
愛夏から滲み出る無言の圧力だ。
「1」
「2」
「さぁん」
「よん」
「ご「ダウト!!」」
「愛夏、おまえまさか・・・」
「どうかした?」
絶対そうだこいつ5のカードを4枚持ってやがる。
それに思いっきりハルをはめるつもりだ。
「まぁさすがにこればっかりやってれば勝負がつまんなくなるわね」

「ご・・・」
はるがはらはらしながらカードを捨てる。
今度は愛夏もダウトをしない。
「6」
「7」
「ダウトだよね?ゆう」
「え?うん。」
なにかとても引っかかる言い方をする。
まさかあやも7を4枚持ってるとか!?



こんな感じでダウトが続いた。
1位はあや、2位は愛夏となった。
3位はまだ決まっていない。
さぁ、どうしようか・・・
俺の手札は今、全カードの半分の枚数ある。
残りは半々でりょうとハルが持っている。
どうしてこんな事態になってしまったかというと原因はおそらく、俺もよく分からないがなぜかあやから集中攻撃を受けたことだろう。
なにかあやを怒らせることでもしただろうか?
んー記憶にない・・・
とりあえず後で聞いてみよう。
まぁそれは置いておいてとりあえず今はこの状況の打開だ。
「ダウトは三人だとなかなか終わらないしもうすぐバスも着くみたいだから、バスがついたときに持ってるカードの枚数で順位を決めるってことで。」

「おぉ。ゆうもなかなかがんばったな。」
愛夏が感心して言う。
疲れた・・・
バスがキャンプ場に到着してしまい勝負はつかずに終わってしまった。
俺は何とかがんばって手札を全体の三分の一まで減らすことができた。
しかし、りょうとハルも同じく三分の一ずつで、結局引き分けになってしまった。
「3人ともまったく同じ枚数ってのもすごわね〜さぁ、カード片つけて。」
愛夏はそういいながら焼肉用の網をカバンにしまう。
トランプを片付け外に出ると真夏の強い日差しが舗装されていない駐車場に照りつけている。
駐車場は木に囲まれていて、大きい管理棟の入り口の片方がある。
駐車場を囲む木々の間にある道を抜けると視界が開け大きい広場に出た。
脇の方には管理棟のもう一方の入り口がある。
つまり、管理棟は駐車場と広場をつなぐように建てられているのだ。
学年全員が広場に整列をして担当の先生達による諸注意を受ける。
先生達の諸注意が終わるとコテージの班の班長がそれぞれ鍵を受け取りコテージへと向かった。
コテージは木々の間に建ててありトイレや水道なども同じように森の中にいくつか建ててある。
「結構綺麗だな〜」
ハルが歓声を上げる。
コテージでの班の構成は俺、ハル、りょう、委員長、そしてかなりハイテンションな双子の木村紀也(きむら のりや)と木村倉也(きむら そうや)の6人 だった。
「この面子だと夜眠れなそうにないな・・・」
「なんだい久遠君?君は寝るつもりだったのかい?」
ハルがハイテンションで言う。
「いや、俺はかまわないけど・・・委員長が・・・」
「なんだい久遠君?せっかくのキャンプで俺が寝ると思ったのかい?」
「わかってるじゃないか委員長!!」
そういいながら三人はガッチリと固い握手を交わした後、双子が委員長を挟むようにして肩を組む。
りょうと顔を見合わせる。
「「・・・委員長が壊れた。」」
「そんな年中無休できちっとなんかしてたらつまんないだろ?楽しめるときには思いっきり楽しまないとな。」
2対4ですか。
本当は俺とりょうと委員長とでこいつら3人を制御するつもりだったんだけど・・・
委員長があちら側にまわったとなれば仕方ない。
こうやって俺達が寝ないことが確定した。


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