第十九話 バレーの結末とフランクフルト



あれから一体何分たったのだろうか?
俺とあやは気がついてしまった。
周りにいるのは変なスイッチが入っているりょうと委員長にハルと双子、愛夏。
まとまな人間は俺とあやだけだった。
その俺たちもその他6名のテンションに飲み込まれ今の今まで気がつかなかったわけだが。
「いつ終わるんだろ・・・」
つぶやいてみるがあや以外、誰の耳にもはいらない。
260対261
バレーの点数か?
結局あれからシーソーゲームが続いていたが、その白熱した戦いの中で俺とあやは疑問を持ってしまった。
 そういえば・・・何点で終わるんだろ?
さて、どうやって終わろうか?
りょうあたりが正気に戻るのを待つか?
その前に俺とあやが倒れてしまう。
「もらったーーーーー!!!!!」
相手の上げた玉がネットの真上に落ちる。
それを相手のコートに叩き込もうと委員長が飛び上がる。
それに対して相手チームのハルも、あと一回ボールに触れることができるので同じように飛び上がる。
「させるかーーーーー!!!!!」

ボスッ

「へっ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
横にいるあやも今起こったことを理解できずにいる。
ドサッという音を立てて二人が地面に落ちた。
砂浜にはボールがちょうど空気栓の部分から破れてしおしおになって落ちている。
飛び上がった二人の振り下ろされる手に挟まれ、その破壊力でボールが割れてしまったのだ。
規格外なんだな・・・
こいつらは

その後、借りてきたネットと破れたボールを返すため海の家へと向かった。
ボールのことを説明するが、海の家のおじさんは当然のことながら信じてくれなかった。
信じろというほうが無理がある。
しかい、幸いにもその瞬間を見ていた店員がいておじさんにそれを言うとおじさんはきょとんとした顔をした後、大爆笑してなぜかフランクフルトを1人に1本 ず つ奢ってくれた。
「ラッキーだな。あついバトルでちょうど腹へってたし。」
ケチャップとマスタードのついたフランクフルトをほう張りながらハルが言う。
俺たちにしてみればボールが割れたことのほうがラッキーだったのかもしれない。
あのまま永遠にバレーをやっていたかと思うとゾッとする。
ふと、愛夏の方を見たちょうどそのとき、ハルのケチャップのついた口元を見た後、顔を赤くしてうつむいてしまった。
え?まさか・・・
いや、愛夏にかぎってそんなはずないか。
「もうすぐ5時か・・・少し泳いでから戻るか?」
海の家のこじゃれた時計を見て言った。
「そうだな。今度はこいつらに首輪つけて泳がせないとな。」
りょうがハルと双子を睨んでいう。
「俺たちは犬かよ」
「いや、もっとたちが悪いな。犬のほうが利口だろ。」
「「「なっ!?」」」
りょうに言われそろって同じリアクションをとる3人。
「ケルベロスだっけ?」
あやがそんな三人を眺めて唐突に言う。
一体何をいきなり。
「ギリシャ神話に登場する頭が3つある地獄の番犬だったっけな」
委員長が解説する。
「なるほど、躾のなってないバカの国の番犬か。」
「アハハッ。バカの国の番犬か。あんたもうまいこと言うね。」
りょうが言ったのを聞いて愛夏が爆笑して涙を拭いているが、俺としては愛夏も結構危ういと思う、なんて絶対に口にできないわけで。
「「「ヴゥーー」」」
突然の攻撃に思わず頬張っていたフランクフルトを噴出しそうになる。
3人が顔を並べて犬の真似をして唸っている。
ハルの顔のすぐ右下にノリ、左下にソウの顔がある。
完璧な構図だ。
馬鹿の黄金比というのだろうか。
そんな三つ子、もとい一匹を監視しつつ、俺たちは軽く海で遊んだ。
もぐってきれいな石や貝を拾ってみたり、ハルと双子は魚を追いかけて手づかみでとってみたり。
「はぁ疲れたー。ノリとソウたちは夕飯何?」
「肉!!ハルは?」
「こっちも肉。そんじゃあさ、腹ごしらえしたら一緒に花火やんねぇ?花火。委員長も」
「「おっいいな」」
「そう来ると思って準備は万端だよ。」
ここでなぜか委員長のめがねが怪しくきらりと光る。
ふと嫌な予感が頭を過ぎるが深く考えないことにした。

ここのキャンプ場は最近のキャンプ場には珍しく特定の場所では花火をすることができる。
花火ができるのは奥のほうにある広場で、そこには芝生は生えてなく砂がしかれている。
俺たちはそこで焼肉をしながら花火をする予定だ。
「それじゃあまたあとでな。いくぞ、双子。」
そういって3人が調理場のほうへ向かっていった。
「よっしゃ。俺たちも肉と花火!!」
奥の広場に行くと、あらかじめ鉄板などが用意されてある。
「ここでやるか。」
そういっていくつか用意されている鉄板のひとつの近くに荷物を降ろす。
まわりでもいくつかの班が焼肉等の準備を始めていた。
「よっし。りょう、肉取りに行くぞ。肉!!」
「わかったから少し落ち着け。」
りょうがはるをなだめながら材料を取りにいく。
「そんじゃあこっちは火をつけるか。」
炭は入っているしすぐだな。
持参したライターで火をつける。
「それにしても。こんなに大量の花火どうするのかな?」
あやが花火でパンパンに膨れ上がった袋を見ていう。
「まぁ、ハルはバカみたいに花火消費するし、あの双子も一緒となればかなりの量使うんだろうけど。それにしても多いよね?」
そっか。この二人は知らないんだな。
「あまいね。委員長も忘れてはいけないよ。」
「委員長?なんで?委員長はそんなキャラじゃないでしょ。」
「そうだよ。どっちかといえば静かでしっかりしてるいかにもリーダーって感じのタイプだよね。」
「まぁ、そのときになってみればわかるよ。」
おそらく委員長のテンションが上がるのは確実だ。
これは、花火が楽しみになってきたな。

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