第二十話 焼肉戦争



「おい、ハル!!!人の肉をとるな!!!」
「焼肉で肉を放置プレイするなんて『この肉あげますよ』っていってるのとおなじだろ?焼肉は戦争だ!!!!」
そういってリョウから強奪した肉を頬張りながら愛夏が皿に乗せていた肉までも自分の口へと放り込む。
「あっハル!!!だったら・・・」
そこで愛夏が不敵な笑みを浮かべる。
肉をとる相手を間違えたな。
「はいハル、アーン」
「!?」
愛夏の突然の発言に、りょうから再び肉を奪おうと奮闘していたハルが愛夏のほうを向く。
「これも喰らえーーーー!!!」
「ふごっ!?」
そこにすかさず愛夏が肉を突っ込む。
アーンとかそういった甘いものではない。
さっきまで網の上でジュージューしていた肉にコショウを大量にかけたものを思いっきり突っ込んだ。
「ぐぁああああ!!!アッチーーー辛っ!!!!」
ハルは口を押さえて地面をのた打ち回っている。

「・・・・平和だねぇあや」
「そうだねゆう・・・」
そんな3人を尻目に俺達は網の端っこで肉をしみじみと焼いて和やかに食べていた。
さすがにあやも止める気はないらしい。
「りょうも張り切ってるね」
「あいつ負けず嫌いなところあるからな」
「ゆうは参加しないの?」
「俺は平和主義だから」
「そっか」
自分の皿に乗っている肉をとろうと箸を伸ばす。
「パシッ」
「あっ」
ハルの箸がその肉をかすめとっていく。
「ゆう?」
「大丈夫。俺は平和主義だから」
そう自分に言い聞かせるようにいってから軽く笑う。
「そろそろこの肉は食えるかな」
網の端のほうでひっそりといい具合に焼けている肉に箸をのばす。
「パシッ」
プチッ
「カッ」
「そうはいくか」
再び肉をかすめ取ろうとしたハルの箸を自分の箸ではさむ。
「ハル君。俺は平和主義なんだけどな〜」
できる限りの笑顔で優しく言った。
「そ、そうですか。」
そういってしぶしぶ肉を戻す。

「そろそろいいかな」
軽くいい感じに火を通した肉に箸をのばす。
シュパッ
「おっゆう。この肉すんげぇいい感じに焼けてるじゃん」
・・・・これはやるしかないな。
肉に胡椒は愛夏がやった。
それなら・・・・

「あぁ、あっちぃーなぁー。ジュースジュース。ヴッ」
かかった!!
ハルのコーラに醤油と一味、油等を混入させておいた。
そうとも知らずにコップいっぱいきれいに飲み干してくれた。
「ウグッちょっと・・・」
そういい残してハルは森のほうへと消えていった。
食事中の皆様、申し訳ありません。
「ゆうって時々怖いよね」
「そうかな?」
俺としてはそんなつもりはないんだけど。
もしかして調合中に思わず笑みをこぼしてしまったことかな?
これからは気をつけようか。

それからの食事は平和だった。
ハルが特製ジュースで具合が悪くなってからは、穏やかで微笑ましい焼肉の光景が広がっていた。
しかし、このとき誰も知るものはいなかった。
これからおきる惨劇を。
「よし、食べ物は全部片付いたな。そろそろ花火やるか?」
この時点で気づくべきだった。
この日この時に限ってりょうは自分から花火をやると言い出した。
あたりは薄暗くなってきて花火にはちょうどいい感じで、ハルが双子と委員長を呼びに行った。
このときから惨劇は始まった・・・

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