第二十七話 決意




「大丈夫ですか?しっかりしてください!」

治療をしようとエアルがゼロに駆け寄る。
仮面と手袋を外すと手からは暖かい光が、目からは大粒の涙が溢れ出てくる。
前に一度レコルドから聞いたことがあった。
エアルは幼い頃に両親に捨てられたところをゼロに拾われ育てられた。
それは機関が創立して間もない頃だった。

「・・・もういい。これはお前の力でもどうにもならない。」

「でも!!あなたはここで死んでいい人間ではない。あなたは・・・」

そこまで言ってエアルは口をつぐんだ。
それを聞いてゼロはなんともいえない表情をする。
そして、今まで仮面の奥から聞いたことが無いような穏やかな声でいった。

「これはもう誰にも止められない。すまないな。できる限りの事はしたつもりだ。おまえは許してくれるか?」

「・・・許せません・・・ここで許してしまったらあなたを繋ぎとめるものがなくなってしまいます・・・・・・」

「・・・そうか」

ゼロは呟くように寂しそうにそういった。
それを最後に一瞬だが永遠のような沈黙が広がる。
その沈黙のあと、決心したようにすっとブリークが動き出した。

「俺がやる。最後にあなたを超えさせてもらう。」

静かにそういった後、力強い咆哮をあげながら走っていく。

「おいバカ。まったく仕方ない奴だ。抜け駆けは許さないっての。」

その後をフォーレが追いかけていく。
手にはハイマ、金色の先が三つに分かれた槍を構えている。
呆れたようにそういいながらも、自分も走り出したくて仕方が無い様子だった。

「二人とも待て!」

「やめて!!二人とも!!」

ゼロとエアルが静止の声をかけるが二人には届かない。
子供に走りかかっていくブリークのナックルの先端部分が球状からとがっていき大剣のようになる。
それを突き刺そうと振りかぶるが、黒い何かに捕らえられて呆気なく真横へと吹っ飛んでいった。
子供が片手を真横へ伸ばし、その袖口から伸びた黒いそれがブリークを壁に押さえつけていた。

「ちっ、ブリーク!!」

フォーレが叫びながら数メートル手前で槍を真横に振る。
すると槍の先端からかまいたちが起こり子供へと飛んでいく。
しかし、その攻撃は片手で簡単に打ち消された。
立て続けに槍を振り今度は地面に突き刺す。
すると、地面が盛り上がり巨大な岩の波となって相手に襲い掛かる。
だがそれも再び黒い物体で簡単に打ち破られる。

「くそっ」

岩の波を破壊した黒い腕はそのままフォーレの体を捕らえられ反対側の壁にたたきつける。

「よわいね。つまんないよ」

駄々をこねるようにそういった瞬間、袖口から伸びる二人を抑えていた黒い物体が消え、代わりにゼロを突き刺したのと同じ剣が袖口から無数に噴出し二人を串 刺しにする。
剣が突き刺さる鈍い音と剣同士がぶつかりこすれあう耳障りな高い音が神殿に鳴り響く。
何千もの剣が突き刺さったところからは血の一滴も流れ落ちない。
すべてが跡形も無く消えていた。
だれも、なにも言えなかった。
二人がいなくなってしまったという事実と力の差にただ絶望した。
エアルがゼロの横で力なく崩れ落ちる。

「ブリーク・・・フォーレ・・・もうだめよ・・・」

「・・・ヴィオ。この状況を何とかできるのはお前しかいない。」

「え!?」

突然のゼロの言葉に思わず声が出る。

「私はもうだめだ。次にこの機関をまとめていくのは・・・おまえだ。」

何を言っているのかわからない。
俺がゼロと同じ立場になる?
ありえない。

「なぜ俺が?」

俺はそこまでの人間ではない。
俺なんかがこれほどまでに偉大な存在であるゼロの後をついでいいわけが無い。

「なぜだろうか。私はおまえを最初に見たときからおまえが特別な力を持っていると確信していた。私の最後の頼みだと思って聞いてくれ。機関の部屋の私の席 にいけば機関のリーダーとしてどうすればいいのかわかる。」

「・・・わかりました」

最後の頼み。
潰れてしまいそうなほど重い言葉だった。

「頼んだぞ。やつは強い。だがきっとお前なら何とかできる。なにがあっても生き延びろ。」

「はい」

精一杯、つぶれないように強い意志をこめて返事をする。
ゼロは俺の後ろに立つ三人へと視線を向けた。

「この子達は目覚めてしまったのか。」

「・・・そうです。」

「皆強い力を持っている。機関に入らないか?今ではもう危険が大きすぎるから無理にとは言わないが君たちが望むなら機関へ の所属を許可する。いや、求める。」

そういって左手を上に上げる。
その手には三つの黒の石が握られていた。
俺はそれを二回だけ見た事がある。
機関の者としての証。
ゼロによって刻印された黒の石。

「ヴィオ、これを。」

「はい」

力強く俺の手に石を渡した。
もう体の半分以上が消えようとしているとは思えないほど。

「後のことは頼んだ。最後に仮面を付けさせてもらっていいか?」

エアルが黙ってゼロの顔に仮面をかぶせる。
ゼロの顔にかぶせられた仮面は最後には宙に浮いているようになり、そして虚しい音を響かせて落ちた。
俺の手の中に冷たいものが現れたのがわかった。

「さぁて。もういいかな?次は誰が死ぬ?それとも今消えていった男の遺言通りこれ以上誰も死なないように本題に入る?」

神殿の遠くまで鳴り響く仮面の落ちる音を掻き消すように求める者が言った。
俺の手に握られた石をエアルに渡してから立ち上がる。

「俺はお前を倒すことをゼロに、師に、ここにいる全員に誓う!!!」

皆が強く仮面を抑えながら力を求める者の方へと向き直った。

「威勢だけはいいね。それじゃあ本題へと入ろっかな?僕がほしいのは君の中にいる化け物だよ。」

「化け物?」

「まぁいいや。来てもらおうかな。」

足元にまた式が展開する。
抵抗しようとするがまったく意味を成さない。
式は俺だけでなく後ろにいる三人の下にまで広がっていた。
まずい!!!!

「三人とも俺から離れろ!」

あわてて三人に叫ぶが、遅い。
りょうが三人を式の外に出そうと手を伸ばしているのが見えた。
次の瞬間には三人を連れて黒い地面の上に立っていた。
真っ黒な何もない空間に黒い地面が一つ孤島のように浮かんでいる。

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