第七話 Old days -アルバム- (2)
次の日の朝。
俺は昨日アズテルと約束した廃れた公園にいた。
俺が公園に着くと同時にアズテルが現れる。
「おはよう。疲れは取れたか?」
「はい」
「それでは行こうか」
そういうと景色が反転し。再び扉の前に立っていた。
部屋に入るとアズテルが手を横に振る。
すると、部屋の中においてあった椅子が後ろに下がって壁に沿って並んだ。
「最初は基本的な力の使い方からだ。まず手に力を集中して力をまとわせることだ。全身の力を抜いて手に力を集中しろ。」
やってみる・・・・が、なにも変化はない。
「体の中から何かがあふれ出して、それが手から流れ出すのをイメージするんだ。はじめは難しいが感覚をつかめばすぐだ。本当ならこんなことをしなくても
もっと簡単な方法がある。それは俺の力を使う感覚をお前に直接流し込むんだが、それには欠点がある。流し込むのはあくまで俺の感覚であってお前の感覚では
ない。そうすると後々になっていろいろな障害が生じてくるんだ。とりあえず今はこれをがんばれ。これができれば後はすぐだ。」
「はい。」
気合を入れなおして力を集中した。
この調子で昼まで練習を続けた。
「よし。とりあえず午前はこれくらいだな。午後も大丈夫か?」
「はい。親には言ってありますし。」
「そうか。よし、昼飯おごってやろう。ハンバーガーでいいか?」
「はい。ありがとうございます。」
「ちょっと練習してろすぐに買ってくる。」
そういうとアズテルの姿が消える。
それから少ししてからだった。
「練習はどうだ?」
真っ白な部屋を眺めていたらアズテルのものとは違う太い声が響いた。
入り口を見ると筋骨隆々な大柄な男が立っていた。
「能力は使えたか?」
「まだです・・・」
黒コートをまとっているということは機関の人間なんだよな?
「そうか。まあこの段階が一番時間がかかる。アズテルはどうした?」
「昼ご飯を買いに行きましたけど。」
「そうか」
そういうと男はドカット床に腰を下ろした。
「帰ってくるまで俺が見てやろう。俺はNo.6ブリーク。どれ、やってみろ。」
そういわれてさっきまでやってたように手に力を集中する。
「なるほど。もう少しだな。もっとリラックスしろ。力んでもできないものはできない。それからイメージをもっと鮮明にするんだ。続けろ。」
「はい」
おれが手に力を集中している間、ブリークは目を閉じて座っている。
集中しているがそれでいて自然な感じという不思議な状態でその様子は瞑想しているようにも見える。
「おまえはいい能力者になるな。能力が繊細だ。アズテルに教わればいい術式師にもなるだろう。それに能力も多い、さすがだ。期待してるぞ。だがそんなに焦
らなくてもいい。時間はまだたっぷりある。」
ふと、目をひらいて言った。
面と向かってここまでほめられるとさすがに恥ずかしい。
照れ隠しするようにうつむいてお礼を言う。
「それでは。あいつが戻ってきたらよろしく伝えといてくれ。がんばれ。」
そういうとブリークはすっと消えた。
なんとなく厳しそうな雰囲気だけどとてもやさしい感じがする人だった。
ブリークがもどった数分後にアズテルがもどってきた。
「悪い。意外と混んでておくれた。とりあえずなに食いたいかわからなかったから全種類何個かずつ買ってきた。」
そういってファーストフード店の袋をどさっと置き中身を床に並べる。
軽く20はあるだろうか。
「すごい量ですね・・・」
「そうか?割と少なめだと思ったんだが」
この人はいろんな意味ですごいと思った。
「とりあえず。食いたいのを好きなだけ取れ。いもはこれ、飲み物はこれだ」
そういってフライドポテトとジュースを差し出してくる。
俺はハンバーガーの山からいつも食べているものを二つ取り出した。
「なんだ。それだけでいいのか?」
「はい。これで十分です」
俺としてはこれでもかなり大いのだが・・・
「まぁいい残りは俺が食う」
そういうと近くにあるものから包みを破り、次々と口へハンバーガーを放り込んでいく。
俺はその光景に呆気をとられた。
「なんだ?食わないのか?」
俺が間抜けに口を開けてその光景に驚いているのをみてアズテルが聞いてきた。
「いえ。食べます。ただたくさん食べるなと思って。」
「そうか?普通だと思うが」
そういいながら次々と口へ放り込んでいた。
「そういえばさっきブリークさんが来ました」
「ブリークが?珍しいこともあるもんだな。それでどうしたんだ?」
「練習を見てくれました」
「ふむ。ブリークは見てのとおり武闘派でな、力の流れとかを感じ取れるんだ。気の流れっていうのか?それで能力の流れも感じ取れるらしいんだがな。ちょう
どよかったかもしれんな」
そういってまた口にハンバーグを放り込み始めた。
お互いにハンバーガーをほおばりながらはなす。
「機関の仕事って大変ですか?」
「そうだな。はじめは結構疲れるかも知れないが、それでもしばらくは俺と一緒の行動だ。慣れてしまえばそうでもないかもしれない。」
「アズテルさんはいつから機関に入ったんですか?」
「さんはいらない。あとそんなに敬語を使うな。上下関係は気にしなくていい。俺もそのほうがやりやすいからな。俺が機関に入ったのはだいぶ前だな20にな
る前だったか。」
「そうなんですか。何で俺は機関に選ばれたんでしょうか?」
「それはお前が優秀だからだ。お前は3つの基本能力が使える。それはかなり稀なことだ。」
「そうなんですか」
「飯食ったら練習を再開する。この段階が終われば後はすぐだ。簡単な力の使い方の応用を覚えて、その後は体術を覚える。」
「体術?」
「そうだ、基本的に能力で戦う時には剣とかの武器を作りそれをつかって戦う。いくら武器を作れても使いこなせなきゃ意味ないからな。筋力なら能力を使えば
一日や二日でかなりのところまで増える。だから能力を発現できるようになった後は体術が一番重要で一番大きな課題となるんだが、まあとりあえずこの段階が
終わらないことには何もできない。」
俺は残ったハンバーガーを口に詰め込み立ち上がる。
体術?
カッコよすぎる
なんとしてもその段階まで早くたどり着かなくては。
「練習します!」
「その意気だ。まぁがんばれ。お前ならきっとすぐだ。」
それを聞き、手に力を集中する。
数十分経った頃だろうか。
手に力を集中してイメージをする。
もっとリラックスしてもっとイメージを鮮明に・・・
体だから何かがあふれ出す感覚・・・
なんとなくイメージの感覚がかなりリアルなものに近づいたような感じがした。
するとイメージとは別に体から何かがこみ上げてくる。
「ッ!?」
思わずおどろいて気がそれてしまった。
今のが能力?
もう一度気を入れなおしてさっきの感覚を思い出す。
また何かがこみ上げてくる。
それが手から流れ出る・・・
手に不思議な感覚を感じ、目を開けてみると金色の何かが手に纏わりついていた。
「アズテル!!できた!!」
驚きとうれしさのあまり大きな声が出る。
これが能力!!
自分の持っていた力に喜び感動する。
「おぉ。早いな。さすがだ。」
金色に輝いている俺の手を見てアズテルが頭をつかんでワシャワシャとなでる。
「今お前がその手にまとっているのは光の力だ。同じようにして闇と虚無もやってみろ。暗闇や何もない空間をイメージしながら同じように集中すればいい。」
言われるように、漆黒の暗闇をイメージする。
すると
「黒くなった!!」
「それが闇の力だ。」
次に何にもない空間をイメージする。
「こんどは白だ!!これが虚無?」
「そうだ。お前ほんとにすごいな。覚えが早い。この調子で応用も覚えていこう。」
そういってアズテルはさまざまな能力の使い方を教えてくれた。
剣、光弾、盾、槍・・・
「こんなかんじだろうな。力の出し方さえ覚えれば後は見てイメージするだけで自由に使える。次はいよいよ体術だな。その前にまずは筋トレだ。」
「筋トレ?」
「そうだ。だが普通にやっても時間がかかる。そこで、能力を使って筋トレをする。いいか・・・」
そういってアズテルからやり方を教えてもらいトレーニングをした。
かなりきつく体力はそんなに使わないのだが体中の筋肉はとんでもないことになっていた。
「ブッハッハッハッ」
部屋にアズテルが大笑いする声が響いた。
「痛い。。。」
「たいてい皆そうなる。」
床にのた打ち回る俺を見てアズテルがいった。
体中の筋肉が悲鳴を上げている。
ようは筋肉痛なのだが普通のものとはレベルが違う。
「まってろ。いま癒してやる」
そういって懐から小瓶を取り出しそこから一滴の水を俺に落とす。
すると体から痛みが一気に消えていく。
「すごい・・・」
「これはNo.5のエアルが作ってくれた薬だ。エアルは癒しの特殊能力を持っていて療術に長けている。」
「りょうじゅつ?」
「ああ。力の使い方のひとつだ。そうだ、術式についても教えてみるか・・・」
俺はこの後もいろいろなことをアズテルから教わり一人の能力者として育っていった。
アズテルに面倒を見てもらってともに行動していたのはだいたい一年ぐらいだろうか。
そして今の俺に至るのだった。
「ふぁ〜」
ねむい・・・
もう寝るかな。
哀れな彼にとってはもうすぐ時間
私の手助けになってくれる彼らももうそろそろ
何年もの時を経てすべてが動き出そうとしている
私も、もっと哀れで愚かな彼を何とかしなければ
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