第八話 あらゆる事象を覆す予想外と買い物




日曜日の朝。
今日は5人で買い物に行く日。
鍵を閉めて家を出る。
9時に学校前のバス停に集合。
時間は8時45分。
少し早く来すぎたかな・・・
学校がある通りへと曲がる。
すると、バス停のところにはもうすでに誰かきていた。
二人いる。
一人はあやだ。
そしてもう一人は・・・
なんと愛夏だった。
しかもたったまま寝ている。

「よう、あや」

「おはよ〜」

「今日はずいぶんと愛夏早いな」

「それが昨日、明日バスだから遅れたらまずいから待ち合わせの場所に一緒に行こうって愛夏と話ししたの。それで朝二人で来たんだけど時間ぎりぎりでまずい と思って走ってきたら、私達二人とも一時間早く勘違いしてたみたいで。」

「ミラクルだ・・・」

バス停に着くまで一時間早いことに気づかないなんて・・・
ということは二人は一時間近くここで待っていたということになるのか?
しかもたったままで寝ている。

「よう、早いなぁみん・・・」

ハルが一時停止した。
原因は言い切ることのできなかった「みんな」に含まれている約一名だ。
しばらく無言のときが流れる・・・

「よう、ハル。なにそんなとこで固まっ・・・」

後から来たりょうまでもがこちらをみて一時停止する。
またもしばらく無言のときがながれ・・・

「お、おれ・・・遅刻したのか?十分時間の余裕をもって出てきたはずだよなぁ?愛夏より遅いなんて・・・」

今度はハルが泣き目になりながらひざまずいていった。
OTLこんな感じだ。
大げさすぎると思いながらも遅刻した上に愛夏よりも遅いという事がハルにとってどれだけショックなことかを良く理解できた。
一方のりょうは自分が遅刻していないことに気づいたようだがそれでも「そんな・・・」とか「ありえない・・・」とつぶやいている。
よっぽど受け入れがたい現実のようだ。

「まさか誰かが俺のうちにある時計の時間をすべて遅らせたのか!?」

ついに陰謀説まで飛び出した。
そろそろ何とかしないとまずいな。

「ハル、大丈夫遅刻してないよ。」

そこであやが救いの一言を言い、ハルは立ち直った。
そして、さっきまでのショックは驚きに変わる。
きっとハルにとってもこれは受け入れがたい現実だろう。
もしかしたらまだネッシーやUFOの方が受け入れられるかもしれない。

「うっそだー、ありえない。愛夏がこんなに早くくるなんて。ついに地球も終わりか・・・」

愛夏がいることより地球の滅亡の方が信じられるらしい。

「まさか誰かが愛夏の家にある時計をすべて早めたのか!?」

陰謀説も変わらないらしい。
そして、散々言われている当の本人はいまもまだすやすや眠っている。
もし、今のを全部愛夏が聞いていたらきっとハルはもう肉片も残っていない。

「ほら、愛夏、おきて。もうみんな来たよ。」

「・・・ぅうん。あっ。ヤバイ。遅刻する!!って・・・へ?」

たったまま寝た上に記憶まで吹っ飛んだようで。

「あたし遅刻してないの?」

「うん。私と一緒にきたでしょ?」

「よっしゃー。さすがあたし。」

ガッツポーズをしながらいう。
時間を一時間勘違いしていたとこから記憶が飛んでいたあたりまでが「さすが」だ。
そうこうしているうちに時間になり俺たちが乗るバスが来た。

プシュー

俺たちは一番後ろの席を陣取る。
さすがに日曜日のこの時間は人が少ない。
バスが動きだす。

「はぁ」

ため息をつきながら気づいた。
何かがおかしい。
しずかだ・・・
誰も何もしゃべらない。
ふと横を見てみると。

「クゥー・・・」

寝てる・・・
あや、愛夏、ハルは横で爆睡していた。
りょうはだまって音楽を聴きながら窓の外を見ている。
なんだかなー
静かなのも悪くないんだけど。
なんていうかすこし静か過ぎるような・・・
なんか物足りないというか。

「ぅん〜〜〜」

隣に座ってたあやが俺の肩に頭をのせる。
やっぱりわるくないかも。
そう思ってしまった自分の単純さに悲しくなったが、そこらへんは気にしないでおいた。



「んーよくねたー」

バスから降りた愛夏が伸びをしながらいう。
ここは俺たちが今日一日を過ごすショッピングセンターの前。

「よっしゃー買い物ー!!」

「一応いっておくけど今日はキャンプの買い物だからな?」

「え!?」

あやさん、どうしてそこで驚くんですか?

「ほらりょう、かたいこといわないの。」

愛夏がスキップで入り口まで行く。

「あーまってよー」

あやがそのあとを追いかけていく。

「女ってなんで買い物ってなるとこんなにもはしゃぐんだろうね〜?」

本当にハルの言うとおりだ。
二人の後を男三人はぶつぶついいながら追いかけて行った。
これから重くのしかかるであろう運命の予感を抱きながら。



その後俺たちは昼食をはさんで一日いっぱいショッピングセンターの中を歩き回った。
そして予感どおりの重い運命、専門用語でいうところの荷物持ちという仕事が俺たちを待ち受けていた。
持っている荷物のうち約20%がキャンプに使うためのもの。
買い物に費やした時間のうち約15%がキャンプの買い物のために費やされた時間。
一瞬俺まで目的を見失いそうになってしまった。
そんなこんなで買い物を終え、最後にみんなおなかがすいたということで夕食も済ませてしまおうということになった。
時間はもう8時過ぎだ。
夕食を食べ終えて片付けたテーブルに頬杖をつく。
俺たちが座っているテーブルは買ったもので埋もれている。
つかれた・・・
今回が初めてってわけじゃないんだけどやっぱりなれない。

「ふぅ〜。たのしかった〜」

愛夏が伸びをしながらいう。
こっちはぜんぜん疲れてるようには見えない・・・

「みんなこんなに遅くまでかかってごめんね。」

「大丈夫だよ、あや。一応こうなること覚悟できたから。」

「ゆうはやさしいね〜覚悟しててもさすがにつかれるっての」

「ハルは体力あるくせにこういったとちはすぐにばてるな。」

りょうがつぶやく。

「だってさー俺あんま人ごみ好きじゃないし・・・それになんていうか肉体的ってよりは精神的に疲れたっていうか。はぁー頭ボーっとする・・・」

「あんたは頭弱いからねぇ。やっぱり頭が弱いと精神的にも弱いんだね〜」

グサッ

「うぅ〜〜」

ハルノックアウト。
疲れているところにピンポイント攻撃か。
愛夏はハルに関しては拳だけでなく言葉でも相手をノックアウトすることができるのだった。

「愛夏〜さすがにそれはひどすぎるよ〜」

あやが言う。

「大丈夫。だってハルだもん。」

「クカァーー」

「・・・」

全員が一気にハルのほうを見る。
寝てる・・・
愛夏にノックアウトされてそのまま寝てしまったらしい。
どうやらさっきの愛夏の発言が心地よい子守唄になったようだ。

「こいつどうする?」

りょうがきく。

「時間も大丈夫だしまだ少し寝かせておいても大丈夫だよ。」

あやが携帯で時間を確認しながら言う。

「そんじゃああたしたちはまたいってくるね〜今度はついてこなくていいから」

「またいくのかよ・・・気をつけろよ。」

りょうがあきれつつ言う。

「大丈夫だって。さっいこうあや。」

二人は机の周りにある荷物を文字通り掻き分けて出て行った。
りょうはかばんから本を取り出す。
おれも少し疲れたし寝るかな。
ゆっくりとまぶたを閉じる・・・


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